メルセデスベンツ/GLA/X156/DCTオイル交換/アダプション
- no11baske
- 10月25日
- 読了時間: 5分

多摩市 T様
メルセデスベンツ GLA(X156)
DCT(ダブルクラッチトランスミッション)オイル交換でご入庫いただきました。

まずは早速作業風景をご紹介いたします。

DCT下部のドレンボルトを緩め、中のオイルを排出
この段階でおおよそ4~5Lほどのオイルが抜けます。
画像右当たりの黒い大き目の部品がオイルパンです。
ほとんどの車両でオイルパンはエンジンやミッションの下側についているお皿のようなイメージを持たれていることが多いですが、このタイプのDCTは横向きについています。

その横向きのお皿「オイルパン」を取り外すと中に見えるのが「バルブボディ」定期的なDCTオイル交換を怠り放置しているとこの中のバルブボディの故障にもつながり、修理費用が大幅に膨れ上がりますので、DCTオイル交換は重要です。
(目安4~5年毎もしくは5~60,000km走行毎)


取り外した内部オイルフィルター(上)とオイルパン本体(下)
フィルターは新品に交換。
オイルパン自体は再利用しますので内部に付着した鉄粉を清掃し、外枠についているガスケット(パッキン)を交換します。

この車両には内部オイルフィルターとは別にがいびオイルフィルターは取り付けられており、基本的にはそちらも同時交換します。
指で指している部品が外部オイルフィルターです。

交換する新品部品たち
先述したフィルター類やガスケットに加え、ボルト類も交換します。
特にオイルパンをとめている8本のボルトはアルミ製なので一度使ったら再利用不可ですので交換必須です。


全ての部品交換後、逆の手順で組付け、規定分のDCTオイルを充填。
その後メルセデスベンツ専用診断機でDCTのアダプションを行います。
DCTの「アダプション」とは、トランスミッションの学習値リセットおよび再学習のことを指します。DCTは走行状況や運転のクセに応じて、クラッチミートのタイミングや油圧制御を自動的に調整する「学習機能」を備えています。しかし、この学習値はオイルの粘度や温度特性に影響されるため、オイル交換後に古い学習値をそのまま使うと制御がズレる場合があります。
そのため、オイル交換時には「アダプションリセット」を行い、トランスミッション制御を新しいオイル特性に合わせて再設定する必要があるのです。

「成功」と表示されたらアダプションは完了です。
アダプションを行わずにオイル交換を終えてしまうと、次のような症状が発生するリスクがあります。
シフトチェンジ時に「ギクッ」とした変速ショックが出る
発進時にクラッチがつながらない、または滑る
シフトダウン時にタイミングが合わず、違和感のある挙動になる
DCT警告灯が点灯し、フェイルセーフモードに入ることも
特にGLAのDCTは電子制御の影響が大きいため、アダプションを正しく実施することが非常に重要です。
最後に試運転を行い、エラーが出ないこと、オイルの漏れがないことを確認して作業終了です。

解説とまとめ
■ DCTオイルの役割
DCTオイルには以下のような役割があります。
潤滑作用:クラッチやギアなどの金属部品の摩耗を防止し、滑らかな動作を維持します。
冷却作用:変速時や渋滞走行などで発生する熱を吸収し、温度上昇を抑えます。
作動制御:オイルの粘度や圧力特性により、シフトタイミングやクラッチのつながり方を電子的に制御しています。
防錆・清浄作用:内部部品の腐食を防ぎ、汚れを分散させることでシステム全体をクリーンに保ちます。
つまり、DCTオイルが劣化すると、潤滑性能の低下やクラッチ制御の不調を招き、結果として「変速ショック」「ギア抜け」「発進時のジャダー」などの不具合が発生しやすくなります。
■ 定期交換の重要性
DCTは、従来のトルクコンバーター式ATに比べて構造がシンプルに見える一方で、制御精度が非常に高く、わずかなオイル特性の変化が動作に直結します。定期的なオイル交換を怠ると、内部温度の上昇や摩耗物の堆積により、クラッチの焼き付き・メカトロニクスの故障といった重大トラブルを引き起こすリスクが高まります。
特にGLA(X156)は、都市部走行や通勤使用が多いオーナーが多く、低速走行時のクラッチ操作が頻繁に発生します。これがオイル劣化を加速させる大きな要因です。そのため、5万km〜6万km、もしくは4年〜5年ごとを目安にDCTオイルの交換を行うことを強くおすすめします。
DCTオイル交換は、ただ抜いて入れるだけの作業ではありません。油温管理や電子制御のリセットなど、専用の診断機と経験が必要です。特にベンツ純正の7G-DCTは繊細な制御を行うため、専門知識を持つ輸入車整備工場での作業を推奨します。
また、使用するオイルも純正もしくはDCT専用規格(MB 236.21など)に準拠したフルードを選ぶことが重要です。安価な汎用品ではクラッチ制御に悪影響を与える場合があります。
DCTオイル交換は「予防整備」の代表例です。
新車から数年経過したタイミングや走行距離が5万kmを超えたあたりで、一度交換を検討することをおすすめします。
定期的にメンテナンスを行うことで、GLA本来のスムーズでダイレクトな走りを長く楽しむことができるでしょう。
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